第一部 秩序
第1章 心理学の貧困
パブロフ、ワトソン、スキナーに代表される行動主義心理学を還元主義的、原子論的な疑似科学として批判する。
第2章 単語の鎖と言語の木
言語論的なアプローチから、文脈と意味論の重要性を示唆。チョムスキーの生成文法を提示する。
第3章 ホロン
ケストラーの思想の中心ともいうべき、階層的秩序の概念。「生命があれば、必ずそれは階層的に組み立てられている。」社会的ホロンとして社会の階層構造を説明。「自己主張的傾向はホロンの全体性の動的な表現であり、全体帰属的傾向はその部分性の動的表現である。」
第4章 不可分と可分
構造の階層性と機能の階層性という概念を提示。階層性を前提としたうえで、それが不可分、全体帰属性を持ったものとして自己完結するホロンであると説明する。
第5章 ひきがねとフィルター
胚の発生やエナガの営巣行動に対する「ひきがね」となる命令や、それに対応する「フィルター」について、階層性とパターン認識という観点から説明する。
第6章 忘れるための記憶
記憶形成のプロセス、抽象化と、それを補償するような感覚の質と階層性の説明をし、体験を想起して再構成するプロセスを述べている。
第7章 舵とり
人間の知覚=行動のルーティンにおけるフィードバック・コントロールを説明する。ついで、サイバネティックスの概念を述べ、生命体のホメオスタシスの自己調整機能をホロンの階層性と全層性という観点から説明する。
第8章 習慣と即興
動物の行動パターンの中には、固定的・機械的なものと、複雑・可変的なものが見られる。階層性のより高いレベルにあるホロンは、低いレベルのホロンより多くの自由度を持っていると説く。
第二部 生成
第9章 胚の戦略
ダーウィンとラマルクによる進化論を批判し、分化と形態形成には階層的に枝分かれした秩序があり、様々の段階で自己調節力のあるホロンへの解剖できると主張する。
第10章 進化−−−主題と変奏
相同という現象をとりあげ、進化における系統発生にも階層性の原理があてはまると主張する。進化においてもライトモチーフとバリエーションがあると示唆している。
第11章 進化−−−始動による進歩
進化は全くの偶然によるものではなく、何らかの方向性あるいは目的に従っていると説明する。
第12章 進化−−−ご破算とやりなおし
進化の道すじをテーマとし、まぐれ当たりの突然変異が演ずる役目は、その系の整合作用の口火を切るひきがね役ということに限られ、そのことと目的性のある進化の過程とを混同してはいけないと主張する。
第13章 人間の栄光
すべての創造的活動−芸術的インスピレーション−科学的発見−喜劇的発明が共通の基本型を持つ。その共通の型というのは、すでに存在はしているが別個のものであった知識の領域、認識の枠組み、あるいは論議領界を共振させることである。
第14章 機械の中の幽霊
開放階層系の一般原理を説明する。それは基本的には三種の既存の学派をひとつの枠にまとめようとしたもので、「階層的秩序」「材料を交代させつつ一定の型を保つこと」「サイバネティックな調節」の三つがその基本である。これに部分性と全体性の二分性を示す二つの顔を持つヤヌス神と、無限を示す数学記号∞を加えると開放階層系の絵巻物ができあがる。
第三部 無秩序
第15章 人類の苦境
情緒に三つの要因が区別される。それは「衝動の性質」「快不快度」「自己主張の傾向対自己超越の傾向の分極」である。正常な状態下では、二つの傾向は動的平衡状態にある。ストレスのかかった状態下では、自己主張の傾向への統制がきかなくなって、それが攻撃的な行動として表れてくる傾向がある。しかし、歴史の尺度でみるとき、利己的な動機でなされる個人的な暴力がもたらす損害は、集団内で共有された信仰体系に対し自己超越的に献身してしまうことから生ずる大災害にくらべれば、ものの数ではない。この献身は、成熟した社会的統合ではなしに幼稚な同一化からきている。またそれは、個人の席にを部分的に明け渡してしまう結果を招き、集団心理の疑似催眠現象を生ずる。社会的ホロンの利己性は、そのホロンの構成員の愛他性を餌として養われる。文明のあけぼののころ、いたる所で認められる人身御供の儀式は、理性と、情緒を基盤とした信仰との間の分裂の初期症状であり、この分裂が、歴史を通じて流れる迷妄の流れを生み出している。
第16章 三つの脳
節足動物と有袋類の進化は、脳の形成に過ちがおこることを示している。進化の戦略が試行錯誤の対象である以上、人間の新皮質の爆発的な成長の途上で、進化がまたもや過ちをおかしたと仮定しても、すこしもおかしいことはない。パペス=マクリーン説は、系統発生的に古い皮質と新しい皮質とが調和して機能していないこと、そしてその結果として、われわれの種には「分裂生理学」が組み込まれていることの強い証拠を提出した。このことは、人間の歴史を通じて偏執狂のすじが走っていることに対する生理学的な基盤を示すものであり、同時にそれを治癒する道を探る方向を指し示すものである。
第17章 ユニークな種
人間の新皮質の出現は、進化がある種に自分でも使い方を知らぬ器官を与えた唯一の例外である。
新皮質に潜在する理性の現実化は、先史時代、有史時代をとおして、神経系の系統発生的に古い構造の、情緒に根ざした活動のために妨げられてきた。脳の古い構造と新しい構造との間の協調が十分でないために、人間の本能と知能は足並みがみだれてしまった。個人、人種、文化の間にみられる広汎な種内差は、相互の嫌悪の源となった。言語は集団内の結合を増し、集団間の障壁を高くした。知能による死の発見と、本能による死の拒否とは、分裂した心の規範となった。
第18章 極頂の時代
人類は人口の爆発、文明の爆発を経験した。
そして、広島の熱爆弾をも経験した。今後、人類は種としての死という考えを抱きつつ生きていかなくてはならないと述べる。そして、ケストラーは「人間の本性を人工的に矯める」として、「心の制御に利用できるようなますます広範囲の一連の化学物質」の使用を示唆している。「『狂気の人』を『賢明な人』に変えようというのである。人間がその運命を自分自身の手の中ににぎろうと決意するそのとき、その可能性は手の届く範囲内に入ることになるであろう。」と述べてこの書を終える。
私自身はケストラーの思想を支持するというわけではないが、「ニューサイエンス」という潮流や、「ホリスティック」といった概念の基礎にあるものを理解する上で、この本は参考になると思う。
もし興味があれば、図書館で借りるか、この本の復刊リクエストへ。
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復刊リクエスト
テーマ : 文明・文化&思想
ジャンル : 学問・文化・芸術