05 月<< 2017年06 月  123456789101112131415161718192021222324252627282930  >>07 月
 
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
1822年に刊行された、大作家バルザック青年期の作品。

物語や怪奇譚と言ってもよいだろう。百歳はゆうに超えて生きている老人が描かれる。そのサブ・ストーリーとしてラブ・ストーリーも。

長命や永世は「束の間の生の子ら」である人間にとっての永遠のテーマ。この物語の老人は、それを超えた存在である。その背景として、メスメリズムや薔薇十字会が登場しており、この時代の精神風土をうかがわせる。

(懐疑的な小男が次のように言う)「夢なんだよ、君。私は、メスメルと桶のことは知っておる。そんなものは、十五世紀の魔術師どもや、山師どもや、錬金術師どもや、法定占星術師どもや、ごまんとあった似非科学などと一緒に、一掃せねばならぬ、これら似非科学をぺてん師どもが善良な地主たちをだまそうと悪用して……」
「そんなものは、人の生の秘密を探ろうとしている薔薇十字会みたいなものだ……」

(大男の老人)「薔薇十字会と、現代では認められていない学問のことをわざわざ口になさったが、まるで何も究めたことのない輩たちの程度の軽蔑ぶりでお話しなさっている。薔薇十字会については……人の寿命を延ばすための学問に果敢に取り組んでいるのにほかならぬのではないかね?生命流体とよばれるところのものを探求しているのではないかね……」



百歳を超える長寿、人の生死を支配と言った超自然的能力の他に、バンパイヤを思わせるシーンなどが描かれ、幻想と怪奇の雰囲気を醸し出す。語り口が何重かに入り組んでいて、物語の終わりが冒頭に続いている。

百歳の人―魔術師 (バルザック幻想・怪奇小説選集)百歳の人―魔術師 (バルザック幻想・怪奇小説選集)
(2007/04)
オノレ・ド バルザック

商品詳細を見る
スポンサーサイト
  • このエントリーのカテゴリ : 文学
最近なにかと話題の多い北欧ミステリの中の一冊。
「ミステリマガジン」2010年11月号には香山二三郎、酒井貞道のお二人によるクロス・レビューが掲載されている。

(BOOK」データベースより)
ストックホルム郊外で起きた一家惨殺事件。被害者の夫婦と幼い娘をメッタ刺しにするという手口から、背後に異常な動機を窺わせた。かろうじて一命を取り留めたのは15歳の長男と、独立して家を出た長女だけ。捜査を開始したリンナ警部は、催眠療法で知られるバルク医師に少年から犯人逮捕につながる証言を引き出してくれるよう依頼するが…全世界で話題騒然、翻訳権の激しい争奪戦が繰り広げられた、匿名作家のデビュー作。

文庫本で上・下巻に分かれている。催眠という観点から読むと、上巻では重体の少年に対する催眠、下巻では催眠を用いるグループセッションの様子が描かれている。ただし、催眠自体がメイン・テーマというわけではない。

分類としてはサイコ・スリラーということになるだろう。カットバック的な手法でサスペンスを盛り上げながら、物語はスピーディーに展開する。アメリカなどの作品とはちょっと違った文学性も感じられる。ホラー的なシーンも多いのでそれが苦手な人には向かないかもしれないが、たくみなストーリーテリングにのって面白く読み進められることと思われる。

作者のラーシュ・ケプレルは、この作品の発表当時は匿名で、その正体についても大きな話題となった。(このあたりの事情は「訳者あとがき」に書かれている。)


催眠〈上〉 (ハヤカワ・ミステリ文庫)催眠〈上〉 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
(2010/07/30)
ラーシュ ケプレル

商品詳細を見る

催眠〈下〉 (ハヤカワ・ミステリ文庫)催眠〈下〉 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
(2010/07/30)
ラーシュ ケプレル

商品詳細を見る
  • このエントリーのカテゴリ : 文学
半七の初手柄話として書かれている。
小間物屋の娘が行方不明となる。何日かして娘は帰ってくるが、いつの間にやらまたいなくなってしまう。そして、その翌日にまた帰り、今度はおかみさんを殺した後消えてしまう。失踪当時、娘は黄八丈の着物を着ていた。
この話を読んでいてわからなかったのが「白子屋のお熊」という言葉。そこで調べてみた。

白子屋のお熊事件
作者は、黄八丈の着物により二つの事件をつなげている。

また、この物語では、見世物小屋の様子が描かれている。
「もうかれこれ午頃で、広小路の芝居や寄席も、向こう両国の見世物小屋も、これからそろそろ囃し立てようとする時刻であった。むしろを垂れた小屋のまえには、弱々しい冬の日が塵埃(ほこり)にまみれた絵看板を白っぽく照らして、色のさめた幟が寒い川風にふるえていた。列び茶屋の門の柳が骨ばかりに痩せているのも、今年の冬が日ごとに暮れていく暗い霜枯れの心持を見せていた。それでも場所柄だけに、どこからか寄せて来る人の波は次第に大きくなって来るらしい。」

推理小説を読むときには、ついつい筋だけを追いがちになってしまうのだが、こうした寄り道をしながらゆっくり読むのもまた楽しいことだと思われる。

半七捕物帳〈1〉 (光文社時代小説文庫)半七捕物帳〈1〉 (光文社時代小説文庫)
(2001/11)
岡本 綺堂

商品詳細を見る
  • このエントリーのカテゴリ : 文学
今年は岡本綺堂の作品を読んで行こうと思っている。
第一作はやはり「半七捕物帳」から。

「お文の魂」は、クライム・ストーリーとして読んでも、幽霊譚のひとつとして読んでも良いだろう。武家屋敷に夜な夜な女の幽霊が現れるという。江戸のシャーロック・ホームズに擬せられる半七はその謎をいとも簡単に解き明かす。

江戸情緒、当時の風俗も描きこまれている。ところで、当時の人にはピンと来たかもしれないが、現代の私たちにはよくわからないセリフがある。半七のセリフにある「延命院の二の舞で」という一言。これが物語全体の遠景をなしていると感じられた。

その「延命院」であるが、「延命院事件」のことを指している。
あの「絵島生島事件」につながるものだ。
同事件について詳しく書かれたブログのページ。
                ↓
延命院事件について

幽霊譚については、草双紙という江戸の風俗を描くことで説明している。同時に、権威者による暗示の効果ということも想起される。作者の岡本綺堂は平易なことばでこの物語を語る。

半七捕物帳〈1〉 (光文社時代小説文庫)半七捕物帳〈1〉 (光文社時代小説文庫)
(2001/11)
岡本 綺堂

商品詳細を見る
  • このエントリーのカテゴリ : 文学
カーター・ディクスン 1941年の作品。原題は、Seeing is Believing (「百聞は一見にしかず」)。

催眠術の実験を殺人のモチーフに使っている。実験は、被催眠者が催眠術師の指示に従うことを証明するために、ピストルとゴムの短剣を使って行われたのだが、被催眠者は催眠状態でその夫を短剣で刺殺してしまう。ゴム製の短剣がいつの間にか本物とすり替えられていたからだ。ヘンリー・メルヴェル卿がこの事件の解決に乗り出す。

これは小説だが、被催眠者にゴムの短剣で刺すように命じる実験は現実に行われたことがあるらしい。その正当性はよく検証する必要があると思われるが、Dr. Armen Victorianによる’Mind Controllers'には、以下のような記述がある。CIAによるマインドコントロールの実験ということである。

P. Janet asked a deeply hypnotized female to commit several murders before a distinguished group of judges, stabbing some victims with rubber daggers and poisoning others with sugar tablets. The hypnotized subject did all these without hesitation. P. 158, 160

(訳)P.ジャネットは、深い催眠状態にある女性に、審判員の目前でいくつかの殺人をしてみるよう指示した。それは(ゴムの)短剣で被害者を刺す、(実際は砂糖玉の)毒を他人に呑ませるというものであった。被催眠者はこれらすべてをためらいもなく行った。


Mind Controllers サマリー

この一方で、それが被催眠者に「ゴムの短剣」、「砂糖玉」であるとわかっていたから被催眠者は安心してそれを行ったという説もある。

日本で出版されている催眠本のいくつかには、「危険なこと」「生命にかかわること」「倫理に反すること」については無意識自体がそれを拒否するなどと、何の根拠もなく書かれていることがある。そうした本は、「だから催眠は安全だ」と主張したげなのだが、そうした記述をうのみにしない方が良いと思われる。

もともと催眠を非倫理的な目的に使用すること自体がどうかしている。しかしながら、「そんなことはありえない」と主張するだけでは何にもならない。単なる願望を語ったものにすぎないだろう。「催眠を非倫理的な目的に使用してはならない」ということは正しいのだが。

この小説を読みながら、そんなこともふと考えた。この小説は1941年の出版で、古いタイプの「本格ミステリ」。密室殺人を取り扱ったもの。秋の夜長に楽しむのも良いかもしれない。


殺人者と恐喝者 (ヴィンテージ・ミステリ・シリーズ)殺人者と恐喝者 (ヴィンテージ・ミステリ・シリーズ)
(2004/03)
カーター ディクスン

商品詳細を見る
  • このエントリーのカテゴリ : 文学
 

カレンダー

プルダウン 降順 昇順 年別

05月 | 06月 | 07月
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -


 
 

全記事表示リンク

 
 

検索フォーム

 

プロフィール

青狐レオ

Author:青狐レオ
催眠や心理学について研究しています。 テーマは「催眠」「心理学」「精神医学」「コミュニケーション」など。その他には、マジック、アート、インプロ、映画にも興味があります。

 

QRコード

QRコード
 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。